拍手ログ8(20091203〜20100313)





あなたならなんて訳す?
from伊作


「私は不運な人間です」

質問の直後、薬箱に躓いて盛大に薬をぶちまけたあとの、か細い呟き。
本来の意味が意味だけに、多少前向きな返答があると思っていただけに、なんとも反応を返しづらかった。
「……どんまいだよ、伊作くん…」
「昨日調合したばっかりだったのに……」
ぶちまけた薬を箒で掃く伊作くんの背中が寂しかった。まさに哀愁漂う感じ。
「私もよくやるし、気にすることないよ」
「二日にいっぺんはやってますが」
「……あらま」
それはさすがに、ご愁傷様、としか云えなかった。慰め下手でごめんね。
小さなため息と共に掃除をする伊作くんに、なんとか元気を出してもらいたくて頭をフル回転させる。
「でもほら、不運でも伊作くん人望あるじゃない」
「先輩に比べたらミジンコみたいな人望です」
「な、なんでそんなに自分を卑下するかな…!」
「私は不運な人間です…」
遠い目で呟いた伊作くんに、私は返す言葉を失ってしまった。
一応私も保健委員なわけで、所謂不運委員なわけだけど、多分伊作くんに云わせればまだまだな不運具合なんだろう。別に不運競争をしたいわけではないけれど、なんだか複雑な気分だ。
伊作くんは可愛い後輩なので、出来るならなんとかしてあげたいところ。でもどうしたらいいのかは見当がつかない。
「あ、じゃあさ伊作くん、幸運な誰かと一緒にいたら、プラマイゼロにならないかな」
「……どうでしょう…」


(あなたが一緒にいてくれたらそれで、なんて、云えないなぁ)