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どこまでもお人好しな人だと思う。別段強制でもないのに、どんなことでも頼まれたら断れない人なのだ。 「お人好しも、過ぎればただの馬鹿ですよ」 「…容赦ないね」 学園の裏口で死にそうな顔をしている鬼蜘蛛丸に、桶を差し出しながらは溜め息まじりに云った。 陸酔いするのは目に見えているのだから、断るなり他の人を遣わせるなりすればいい。しかしきっと、彼は二つ返事で笑って承諾したに違いないのだ。だいたい、第三共栄丸も鬼蜘蛛丸の陸酔いは折り紙つきなのがわかっているのだから、最初から別の人に頼めばいいのに。 「毎度のことですけど、鬼さん、心配させないでくださいよ」 「面目ない」 青い顔で謝られては、それ以上何も云えない。確信犯かと疑いたくなるが、彼がそんな小細工を考えるはずがないと結論付けた。何せ、彼はお人好しに加えて正直者なのだ。 いずれにしても、こんな状態の鬼蜘蛛丸を長く陸にいさせるのは忍びない。気を取り直し、は早めに彼の用事を済ませてやることにした。 「それで、今日はどういったご用件で?」 「さっさと帰れ、て聞こえるんだけど」 「おや。わかっているなら話ははやい」 「くん、君ね」 心なしか傷付いているように見えたので、冗談です、と軽くフォローを入れてみた。生憎、余計傷付けたようだったけれど。 まぁ、冗談はさておき。 「鬼さん、別に鬼さんが嫌なわけじゃあないんですよ」 「そりゃあわかるけど」 「これでも一応心配してるんですから」 世話かけないてくださいね。 笑顔で告げれば、項垂れて撃沈していた。 とどめだったらしい。 ----------------------- に悪気など一切ない \(^O^)/ |