貴方と一緒なら死ぬのも悪くないなぁ、なんて云ったら、あの人は口元を歪めた。 「おかしなことを。まさかお前、私が死ぬとでも?」 「まさか。だって貴方は死神ですもの。死ぬはずが」 すると今度はゆっくりと眼を細め、その瞳は私を鋭く射抜いた。恐ろしくはないが、嫌だった。普段から、決して優しい眼差しなど向けられはしない。それでも、こんな。こんな眼は、滅多なことでは見られない。 「一体お前はどこまで馬鹿なのですか。まったく愚かだ」 「どういう意味です」 「そのままの意味です」 残念ながら意味がわからなかった。純粋に。難しい言葉なんて使っていないのに、光秀さまの話は難しい。 しばらく考えていたら、不意に頭に衝撃が走った。顔を挙げれば、光秀さまがとても良い顔で微笑んでいた。ろくなことが起こりそうにない。 「ない脳味噌を絞ったところで意味はありません。みっともないからお止めなさい」 「みっともないって」 「お前は余計なことを考える必要はないと云っているんですよ」 「余計なことじゃあ、」 だって本当にそう思ったのだ。まだまだやりたいこともやるべきこともあるし、何より光秀さまのお傍にいなければならないけど、もし死ぬのなら、光秀さまと一緒に。光秀さまと共に逝くなら、きっと地獄だろうけれど。 「丁度ね、地獄も見てみたいなぁって思ってたんです」 「フフフ、お前、喧嘩を売っていますね?」 「生き地獄は御免です」 |
平行線
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-------------------- 光秀の傍にいられればなんでもいいヒロイン 無意識にヒロインが死ぬのを嫌がってる光秀 気付かない二人 20110128 再録 |