一人きりで泣くことを恐れるようになったのは、一体いつからだったろう。 |
|
「アーレーン!」 ノックはしない。開け放ってから名前を呼ぶ。了承を得る必要はない、だって得られなくても入るから。 神田なんかにやったら確実あの世行きのことをしても、生憎アレンは神田と違って短気でも心が狭くもないから大丈夫。口にしたら何かされるから云わないけど。 以前、今回と同じようにドアを開け放ったら、遊びに来ていたらしいラビに非常識だと云われた。非常識な人に非常識だと云われることほど屈辱的なことはない。 着替え中とかだったらどうすんさ、とか云われたけど、まぁ、実はそれ経験済みだったのだ。でもお互いあんまり気にしてなかったので何事も無かったかのように会話してたんだけど。 そう告げればラビは、お前らぜってぇおかしい、と呟いて部屋を出て行った。失礼だよね。 「、どうしました?」 ベッドに腰掛けて本を読んでいたアレンは、特に驚いたようすもなくにこやかに私を迎えてくれた。私はアレンのこういう優しいところがとても好きだ。 アレンの笑顔に答えるように私もにこりと笑い、手招きされるままアレンの隣に腰掛ける。 「うん、ちょっと借りるものがあってね」 「僕に?」 「そそ」 何を、と首を傾げるアレンに私は云った。 「肩と、ハンカチ」 私を見つめるアレンの瞳は真っ直ぐだ。十五歳。満足に感情を隠すことを知らない、出来ないこの子の純粋さが最初はキライだった。 けれど今は狂おしいまでに愛している。 だから私は告げたのだ。 ―――『泣きたい』と。 ----------------- 頼ることは弱さだと思っていた。 でも、頼っていいことを知った。 『頼る』ことよりも『頼れない』ことのほうが弱いのだと気付いた。 |