だから私たちは人間なのだと思う。浅はかで醜くて、どうしようもないくらいに愚かしい生き物。それが人間。

理由と原因を提示するのはいつだって自分たちなのに、結局そんなものは知らぬ事、と顔を背けて己を正当化する。
紛れもなくそれは罪だけれど、人間はそれに気付きもしない。

だから救いようがないと云うのだ、だから私たちは人間なのだ。


「フレデリカ」

「何?」

「誰も貴方を憎まない」

「何、戯れ言?」

「独り言、かも」


肩を竦めて苦笑すれば、彼女は小さな溜め息を吐いた。

初めから人間は罪をきているのだから、今更新しく罪をきることはない。彼女のような人なら尚更。
しかしそんな私の言葉をすんなりと聞き入れてくれるような素直な人間ではないから困っているのだ、彼女は。


「あなたは逃げているのよ」


私の言葉が一体彼女に影響を与えているのかは知りようもないが、無駄にはなっていないのだと信じたかった。溜め息を吐いて眉間に力を入れても、決して彼女はそっぽを向かない。うんざりしたような顔で、しかし話だけは聴くのだ。
そういうところは可愛いと思う。ある意味では彼女の美徳とも云える。
しかしそこが彼女の甘いところでもあった。本当に戯れ言だと思っているのなら、譬え上辺だけの態度になろうと私の話など聴かなければいいのに、そうはしない。出来ない、と云った方がいいかもしれない。彼女は妙なところで生真面目で、不器用だ。

フレデリカ。

呼べば彼女は振り返る。鬱陶しそうな緩慢な動きで、振り返る。


「罪じゃあ、ないのよ」

「……何が」


「―――望むことは、罪じゃないの」


ねぇ、フレデリカ。

今度ばかりは、彼女は振り向いてはくれなかった。












(どうして独りが嫌いなくせに)
(大嫌いなくせに)

(ヒトリになろうとするの)











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あの終わり方なの・・・!(震)


20071202
20100429(再録)