マリアの微笑み




「わたしは先生を殺してなんてあげませんよ」

「……どういう意味です」

「どうって、そのままの意味です」

「あなたの意味のわからなさに絶望しました。首を吊しことにします」

「ならばあなたの首を吊す縄を切ってしまいましょう」

「ならば屋上から飛び下ります」

「ならばその下にマットを敷いておきましょう」

「ならば手首を切ります」

「ならばすぐさま止血をしましょう」

「ならば入水します」

「ならばわたしもご一緒に」

「………それは、」

「困るでしょう?」

「困りますね」

「だから、わたしは先生を殺してあげません。どんなに死のうとしたって、あらゆる手段を使ってあなたを死なせない」

「何故ですか」

「決まってるじゃないですか」


少女は笑う。
にこりと。
ああ、確かこの微笑みをどこかでみたことがある。

一体、どこで?





「先生がこの世界から居なくなったら、わたしはこの世界を恨むし、この世界で呼吸なんか出来ないし、この世界に絶望してしまいます」





(そうだ、いつか行った教会の、)










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だからね、先生
わたしはあなたを殺してあげません