貴方の笑顔に嘘偽りがないことを知っているからこそ心が痛い。
対する私が嘘偽りばかりなのを知らぬ振りをしているから心が苦しい。

叶うのならば過去の清算をしたかった。
過去の私は確かに後悔などしていないけれど、そして、贖える罪でもなければ贖える罪があるなどとは思っていないのだけれど。
それでもすべてをなかったことのようにして生活出来るほど私は狡くなりきれなかった。
数え切れないほどの罪を犯し、人を殺め、己の信じたもののためだけに邪魔なものは排除してきた。
なんて浅はかで短慮で、愚かしいことだろう。
ただ、一番愚かだったのは、―――愛した人すら裏切ったこと。


(ごめん)


この声は永劫に届きはしない。
どんなに喉が枯れるまで叫び続けようと、この声があの人に届くことはないのだ。
哀しいなどと思う権利はない。そんなもの、愛国心と一緒に失った。


(ごめんなさい……)


胸の中で呟くたびに、心が張り裂けそうになる。自業自得だ。因果応報だ。知っている。わかっている。
それでも辛かった。


(―――どうか、許して…)


何を許してほしいのだろう。
何が罪だと云うのだろう。
それすらもわからないのに、私は許しを請うのだ。
許す神を信じぬままに。


(―――…)


本心を吐露することも、罪を贖うことも出来ない。

総ては罰。
醜い私への罰なのだ。

ああなんて。
ああどうして。
ああこんなにも。











ああ心が痛い





(いっそ心を殺せたらよかった)
(傀儡のように生ける屍となれたら)

(ああ、そんなの、嘘よ)






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いつかみた夢が刃となって私を突く。
ただ一点、心の臓腑だけを狙って。