(だって、それは)






好きだなんて云わないで





 君はいつも云うね、太陽みたいな笑顔でもって。真っ白な歯をキラリと見せて、腹が立つほど爽やかに。私はその笑顔にしてやられて、優しい声に包まれて、君に負かされてしまう。

 笑って泣いて、泣いて笑って。
 キスして抱き締めて、抱き締めてキスして。

 何度も何度も、繰り返して云うね。いつだか、飽きないの、って訊いたら、飽きるわけないさ、なんて答えられたことを思い出したよ。馬鹿だね、私の答えはいつも決まっているのに。
 馬鹿の一つ覚えみたいに同じことを君は、君は。


「好きさ、

「知らない、ラビなんて」


 つんと顔を背ける私に、はつれないなぁ、なんて余計なお世話。つれなくて結構よ。


(でもね、)


 君の声がまだ耳に残っている。じわりと広がって、それはほんのり幸せな痛みを伴うよ。目の奥が少し熱い、心の奥が少し痛い。理由は知らない。知らない振り。




「何」

「好きさ」

「・・・・・・馬鹿ね」


 何度も何度も飽きずに君は繰り返す。返す私も同じ事を繰り返す。エンドレス、無限ループ。終わらない問答。もしかしたら一生繰り返すのかも、と錯覚しそうになるわ。


(でもね、気付いてるでしょう?)


 すきだよ。

 しらないわ。

 すきだよ。

 ばかね。



(私、一度も嫌いとは云っていないのよ、今まで)





素直になれなくてごめんね。

(こうしていれば、君が私から離れることはないんじゃないかと思ったの)(中途半端につなぎ止めていたのよ)(ごめんね、狡くて)