私は愛を叫んだ。

きっとずっと届かない愛を。






サヨナラ。





雨が嫌いだった。
雨は私からいろんなものを奪ったから。

幼稚園のときも、小学校のときも。
遠足の日にはほとんど雨が降った。

雨は、私から楽しみを奪った。


中学校のときも。
文化祭の前日に大雨が降って、私はテントや看板の撤去作業をさせられた。

雨は、私から休息を奪った。


今年の春も。楽しみにしていたデートの日に大雨。おかげでその日のデートは中止になった。

雨は、私から喜びも奪った。



「じゃーな」



雨の中で、私たちは別れた。
別れたというよりも、私が振られたんだ。

判ってた。
御柳は、もう私のことを好きじゃないんだって。

でも、確かめるのが怖かった。

好きじゃないって。

嫌いだって。


云われるのが、酷く怖かったんだ。




だから、ずっと待ってた。

また御柳が私を好きになってくれるのを。

でも、それも本当は判ってた。
御柳が私を好きになることは。



もう、今後一切ありはしない。





「うん。今までありがとう。お疲れ様」

笑えたかな。
最後くらい、笑ってお別れしたいよ。

さよなら、私の大好きな人。




雨は、私の大切な人も奪った。

私はずっと好きだった。
嫌われたって思い始めても、私は嫌いになれなかった。

私は、ずっと御柳が好きだったんだ。


心が壊れそうだよ。

小さくなっていく御柳の背中を見つめて、私は一歩も動けなかった。

御柳は一度も振り返らなかった。

私は、その場に立ち竦んでいた。


「・・・・・・ずっとね」

聞いている人は誰もいないのに。

「私は、ずっとね」

雨に顔が濡らされて。

私の顔は濡れていて。



御柳は、自由になった。



雨と。

泪に。

濡れていて。




「私はね、それでも御柳が好きだったよ」





誰も聞いていない。

誰もいない。


雨は、私の心も奪って行った。



「サヨナラ。」










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弱い自分のせいで失恋。
好きで好きで仕方なくて、私は呼び止めることもできなかったんだ。


20110128 再録