目の前にフィルターが掛かったような、そんな錯覚に陥る。 別に世界がモノクロに見えるとか、目が悪い訳ではないのに。 アローアロー、人類皆々様聴こえますか。 アローアロー。 世界が崩壊する音が聴こえますか、また、それはどんな音ですか。 アローアロー。 今世界は何色でしょうか、私には靄が掛かってよく見えないのです、まるでここは。 ここは、雲の中のよう。 |
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「ワンコ、お手!」 「ワン!って違うから!何云うの!」 「柿ピー、今、ケン、ワンコで反応したよね」 「ケンは結局ワンコなんだよ」 「違うから!」 ぎゃあぎゃあわあわあ騒いでいると、骸さまは『仲が良いですねえ』と笑った。わたし、骸さまの笑顔、大好きです。 モノクロフィルター警報。ピコピコ真っ赤いランプが点滅中。緊急、皆さん気をつけて! モノクロフィルターが迫ってきています。わたしはモノクロフィルター予備軍です。モノクロには見えないけれど少し靄が掛かって見えています。 「骸さま!」 「何ですか、」 「わたし骸さまの笑顔大好きなんですよ!」 「ありがとう、僕もの笑顔大好きですよ」 「やったーホントですか?ねー聞いて聞いてケンと柿ピー!」 「クフフ、はおもしろいですねえ」 にっこりという表現がとてもとても、ものすごく似合うような笑顔を浮かべて骸さまは云ってくれました。そうして一緒に、その綺麗な真っ赤な色をした手でわたしの頭を撫でてくれました。 わたしは単純だから、骸さまが大好きだから、それだけで上機嫌になれるのです。 目を細めて笑えば、骸さまも笑ってくれました。 モノクロフィルター警報。ピコピコ真っ赤いランプが点滅中。緊急、皆さん気をつけて! モノクロフィルターはすぐそこです。走って、逃げて!早くしないと追いつかれて捕まってそうして、そうして。 目の前が。 白く黒く。 なってしまう、よ。 「骸さま」 「なんですか、」 「あのですね、わたし今すごく大変なことになっているんですよ」 「どうしました、?」 「あのですね、」 『モノクロフィルター警報。ピコピコ真っ赤いランプが点滅中。緊急、皆さん気をつけて!』 どうやら警報は遅すぎた模様。 だってね。 「世界が、モノクロに、見えるんです」 世界一好きな色は赤。 鮮血の赤には思わず感嘆のため息を漏らしてしまうほど好きだったのです、わたしは赤が好き。 世界一好きな人はあなた。 血の中で舞うように人を殺すあなたが何者にも換えがたく好きでした、わたしはあなたが好き。 それなのに。 赤も、あなたも。 ケンも、柿ピーも。 モノクロームの世界の中に、突入してしまったかのように、赤くても、白、黒に見えてしまうのです。 「」 「はい、骸さま」 「大丈夫ですよ」 「何が、ですか?」 すると、モノクロの骸さまは、モノクロでもカラーのときと同じように優しく冷たく優しく微笑んで、こう云いました。 『それが、本来の世界なんですよ』 アローアロー、人類皆々様聴こえますか。 アローアロー。 世界が崩壊する音が聴こえますか、また、それはどんな音ですか。 わたしのせかいは、 おともなく、こわれました。 -------------------- モノクロの、世界はとても怖い。 |