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なんでいつも遠くを見ているのだろう。近くにいる俺たちのことなんて決して見やしない。彼女の透き通ったエメラルドは、俺のことなど映してくれないのだ。 「さん、お茶がはいりましたよ」 「わぁ、良い香り。ありがとうサンジくん!」 「いえ、さんのためなら」 「うふふ、ありがと。でも、そんなこと云っても、なぁんにもでないのよ?」 でもやっぱりサンジくんの淹れてくれたお茶は格別よね。 嬉しそうに笑ってくれたって、感謝の言葉を送られたって、足りなかった。 彼女が喜んでさえくれたら? 彼女が笑ってくれたら? それだけで満足出来るはずがない。足りない足りないと叫んで、その細い肩を力一杯引き寄せて抱き締めたくなる。感謝なら言葉じゃなくて行動で示してもらいたかった。 こんなにも自分のなかの感情が汚いものだとは思っていなかったから、最初は少し困惑した。けれど、仕方ないと思う。彼女に対する気持ちは、ナミさんやロビンちゃんに対するものとは全く違う。 (欲しい) 云えない言葉を飲み込んで、笑う。 なんて滑稽。 なんて残酷。 ―――彼女が想うただ一人の赤を、会ったこともないかの大海賊を、憎いと。思った。 ----------------------- 呆れるほどに盲目的だから |