死因は愛!





死んじゃうんじゃないかと思うほどの息苦しさ。まるで誰かの手があたしの首を鷲掴んで絞めているようで、けれどそれはどこか心地良い。おかしいかもしれない、と思いつつ、あたしはこの甘美な苦しさを手放せないでいた。
苦しい。苦しくない。
ああ、一体あたしはどうしてしまったのだろう。絞り出すように吐き出した息は僅かで、自然と口元が緩んだ。
いっそこのまま死んでも構わない。こんな幸せな苦しさならばいくらでも苦しもう。
苦しくとも、苦しくない。
なんて甘美な死への誘惑だろう。死なないことをあの日誓ったはずが、今は死にたいとすら思っている。なんという矛盾。
あたしは死ねないし死ぬわけにはいかない。だって決めたのだ、死なないと誓ったあの日、あの人の左腕になると決めたのだ。だから死ねない。なのに死にたい。
こんな話をしたら、あの人はどんな顔をするだろう。怒るだろうか。笑うだろうか。哀しむだろうか。それとも。
笑いが込み上げる。こんな疑問はあまりに滑稽すぎた。


「どうした?」

「ううん、何も?」


後ろから縋るように彼の背中に抱きついたまま、笑う。すると揺れた空気を敏感に察した彼が、僅かに首を後ろに向けて問うた。なんでもないのよ、と答えると、おかしな奴、と笑われた。
そうね、きっとあたしはおかしいの。この息苦しさが愛おしいと思ってしまうのだもの、きっとおかしいのだわ。
また笑ってずっときつく彼の背中に抱きつく。

ねぇ、


「死んじゃいそう」


貴方が愛しすぎて。










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ほんと好きすぎて死ねる