夜空に散りばめられた星々の輝きを忘れない。あの日確かにあたしはそこで星の輝きを享受した。 だから、大丈夫。 あたし、もう泣かないよ。 |
沈黙は破られた
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死んでしまいたい。 満天の星空の下で、あたしは呟いた。死んでしまいたい。これは本心だった。嘘偽りなく、出来ることなら。 「別に」 吐き出した息は白く濁っていた。ボーッとしながらあたしはそれを眺め、シリウスの言葉を聞いた。 「死にたいなら、俺は止めねーけど」 でも、と続けた。あたしの手を握る彼の手に、力が籠る。少し痛いくらい、強く手を握られた。シリウスの表情は暗くてよく見えなかった。ただ、笑ってはいないだろうし、泣いてもいないだろうとも思う。 「泣くだろうなぁ」 「お前が死んだら俺、泣くだろうなぁ」 月がきれいだった。真ん丸で、コンパスを使って描いた円のようだった。 「そっか」 「うん」 「あたしが死んだら、シリウス、泣いちゃうか」 「じゃあ、死ねないなぁ」 馬鹿なこと云って、ごめんね 学生時代のことを思い出した。 死にたいと云ったあたし、あたしが死んだら泣くと云った彼。 バカな人。 逆だって同じなのに。 --------------------- あなたが死んだら、あたしが泣くのよ。わかってる? ああ、そうね。わかってないから、死んだのね。 バカな人。 あたしを置いていくなんて。 20100401 再録 |