モテるくせに彼は誰とも付き合わない。不思議だった。気取ってるのかとも思った。だけどこの間聞いてしまった台詞にすべての謎が解けてしまったの。

(ああそんなことならばいっそ知りたくも)






永遠片想い





ベタなシュチェーションだ。放課後の裏庭、私は図書棟へ向かうためにこの場所を通るつもりだった。正規の渡り廊下はあるけれど、こっちのほうが近道だから。
そして目撃してしまったのだ、彼が、愛の告白を受けているところを。


(すきです、八神くん。私と付き合ってください)


私には到底口にできない台詞だと思う。私は彼との友人関係ですら、壊したくない。失うのが怖い。

気付いてすぐに立ち去ればよかったものを、私はその場に立ち尽くしてしまったからいけなかった。断ることは予想できた。だけど、訊きたくなかった言葉まで、聞いてしまった。きっと私は一生あの言葉を忘れない。


(すきなひと、いるから。ごめん)


―――ねぇ、誰なの、すきなひとって。
あなたはいったい誰がすきなの。


(多分もう二度とあえないけど、俺、すきなひと、いるから)


二度とあえないなら諦めたらいいじゃない。諦めて新しい恋をしたらいいじゃない。この先人生まだまだ長いのよ、中学生程度で何云ってるのよ。

だからねぇ太一、わたしのこと、すきになってよ。



(あの夏俺は大切な仲間と冒険をした)
(あの夏俺は初めて人を好きになる哀しさを知った)

(あの夏俺は大切な人をうしなった)











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どっちが、片想いか。


20071208 20100429(再録)