「死ねばよろしかったのに」


どんなに冷めた眼で云われても俺は本気にしない。あいつが本気でそんなことを云えるはずがないことを知っていたから。
あいつは優しい。少しだけ優しすぎた。だから心を護るために、こんなことを云う。
硝子細工のように繊細で儚い心は、しかしケースの中にしまい込むことで強さを勘違いしていた。


「死ねばよろしいのに」


死なねぇよ。

呟けば、面白いように顔が歪んだ。
よくもまぁそんな表情が作れると思う。少なくとも、俺が知っているあいつにそんな表情は作れなかった。
いつも俺にくっついてまわる、泣き虫なあいつ。
置いていかないでと泣いたあいつを置き去りにしたのは、もう何年も前のことだった。


「貴方方が生きていることが腹立たしい。まったくもって」


死ねばよろしいのだわ。吐き捨てるように呟いた。


「死なんよ、俺たちゃ」



―――せめてお前が、幸せになるまでは。











嘘を見抜く眼





(危険だからと理由をつけて)
(お前を置き去りにした俺たちを)

(どうか許してくれないか)






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私をひとりきりにした貴方方を
私は決して許さない

(私はミツバみたいに聞き分けのいい子じゃないのよ)

(さみしかったのよ)