必ずと約束するくらいなら
|
守れもしない約束なんて、するもんじゃない。 ましてや、あの人は私の主で、私はあの人の従僕なのだから。 世界を壊すと断言したあの人の傍に仕えると決めたのは私で、従僕なることを決めたのも私。 けれど、傍にいることを許してくれたのも、私を殺さなかったのも、全部すべてあの人なのだ。 そんなあの人を。 強くて強くて怖くて、 強くて強くて儚くて、 強くて強くて優しい、 そんなあの人を。 「ルカ様ー」 「黙れ」 「まだ何も云ってません!」 「何も云うなと云う意味だ」 「そんなのちゃんと云ってくれなきゃわからな……あ、はっはーんさてはルカ様私とツーカーな仲になりたいんですね」 「死ね」 「最近気付いたンですけど、ルカ様の『死ね』は『大好き』ってことですよね」 「どうやったら貴様のような思考にたどりつくんだ」 「それを知りたきゃ私を隅々まで知らなくちゃ駄目です」 「不可能ということだな」 「諦めたらそこでゲームセットですよ!!」 「黙れ!!!!」 私が。 私みたいにちっぽけで、 私みたいに弱くって、 私みたいに臆病な、 私なんかが。 「ルカ様ー!」 「黙れ殺すぞ」 「もういいですよそういうツンデレは」 「つ………」 「決意表明です!選手宣誓です!!」 「一人でやってろ」 「寂しいから嫌です」 「知ったことか」 「私はー!!!」 身の程知らずで。 「これから先ー!!!」 怖いもの知らずで。 「何があろうとー!!!」 そのくせ、狡くて。 「この魂に掛けてー!!!」 大言壮語ばっかりで。 「貴方を護ると誓います!!!!」 ただ傍に居たかった。 それだけで幸せだった。 あの人は私を愛してはくれなかったけれど。 私はあの人を愛していたから。 例え、単に気紛れで私を殺さなかっただけだとしても。 私は嬉しかったから。 例え、惰性で傍に置いていたのだとしても。 私は幸せだったから。 「要らぬ」 「ひ、酷い!人の一大決心を!」 「俺は貴様に護られねばならぬ人間ではない」 「えー護られてくださいよ」 「要らぬ」 「ルカ様鬼だ!」 「勝手に云ってろ」 「鬼畜!」 「………」 「般若!!」 「…………」 「なまはげ!!!」 「……あの世に行く覚悟をしろ!!!!」 「だってさっきルカ様、勝手に云ってろって云った!!!」 「限度があるであろう!!!!!」 「きゃああああああ!!!!!!???」 私は知っていたから。 狂皇子と呼ばれたあの人の、本質を。 本当は、誰より何より優しい心の持ち主だと、知っていたから。 「ううう、容赦なさすぎですよぅ……」 「殺さなかっただけましだと思え」 「わかりました。愛情ですね」 「心底死ね」 「嫌です」 だから誓ったのに。 死なせたくなくて。 生きてほしくて。 苦しまないでほしくて。 それなのに。 「ルカ様ー」 「……なんだ」 「誓いが駄目なら、」 ならばせめてと口にしたことを、私はきっと、この先一生後悔し続けるのだろう。 取り戻せるなら取り戻したい。 やり直せるならやり直したい。 それが叶わぬ願いだとはわかっていて、尚も願わずにはいられぬ願い。 罪であると、誰かの声が聞こえた気がした。 「永遠に、必ず、一番愛してるって、約束します!」 ------------------------ 永遠て、いつまで続くのかな。 |