さようならは前触れもなく





結局私は何にも伝えられなかった。
どれだけ尊敬せたたかだとか、
どれだけ大好きだったかだとか、
どれだけ幸せだったかだとか。
伝えたかったことの、きっと半分も伝えられなかったのだ。

伝えきる前に。

あの人は死んでしまったから。

私はあの人の従僕だったのに、あの人の駒で道具だったのに、あの人は私を戦場に連れていきたがらなかった。
足手まといに、なると思われていたからだと思う。
私は強いけれど、ルカ様ほどには強くないから。

でも、無理矢理にでも、ついていけばよかったのだ。
役には立てなくとも、盾にはなれたかもしれなかったのだから。

だけどそんな後悔はもはや意味を成さなくて、虚しさだけが私の心に残る。

大好きだった人。

私の主。

さよならを告げる時間さえも、私には与えられなかったのだ。










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救われないなぁ