私は遠距離交流なんて出来ない人だと自負していた。 中学のときに付き合っていた他校の彼氏と、実に1ヶ月という早さで別れを告げた経験があるからだ。 だから、こんなことはありえないと。 思って、いたのだ。 |
近距離交流
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「あれ、英士だー。」 近くのコンビニへ買い物に行くと、入り口のすぐ傍にクラスメイトが佇んでいた。 郭英士。 何気に小学校から現在の高校までずっと同じ学校であり、まあ所謂幼馴染というものに分類されるであろう友人だ。 そんな彼は、私の姿を確認するなり『げんなり』と肩を落とした。 なんて失礼なヤツか。 「コンビニの外で何やってんの?不良の兄ちゃんごっこ?」 「と一緒にしないでよ。人待ってるんだよ」 「女?」 「女とか云わない。違うから」 「なんだよホントつまんないなー英士は」 「面白くなくて結構。入るならさっさと入れば?」 「いや、こうなったら英士の待ち人を見るまでは入れないでしょうよ」 「・・・馬鹿じゃないの」 「今更知った?」 「再確認したんだよ」 そう云って英士は盛大にため息をついてくれた。ホントムカつくな、こいつは。いやこういうとこ気に入ってるけどね、英士らしいし。何だかんだいって私英士好きだし。 しかしコンビニの外で待ち合わせって何やってんだろうこの人は。こいつにしては頭悪い考えだなあ。コンビニ大迷惑だよ。 なんて思ってたら、コンビニの自動扉が開いた。中からは『ありがとうございましたー』とバイトのお兄ちゃんのマニュアル通りの声が聞こえた。 「ヨンサー、楽しかった!」 「・・・コンビニが楽しいって何・・・」 「いや、だって日本のコンビニって久しぶりで・・・て」 出てきたのは、アジア系で日本人っぽい人。でも何となくだけど日本人ではない気がする。えーと、中国とか韓国とかのような感じ。うん、あてずっぽだけどね。 とにかく、英士をヨンサと呼んだその人は、英士の隣に立つ私を確認すると動きを停止させた。でも笑顔だ。 「ヨンサの彼女?」 「えーそれはお断りですねえ」 「こっちの台詞だよ」 「そんなわけで彼女じゃないです」 「なんだーつまんないなヨンサ」 「・・・おんなじこと云わないでくれる?」 「うわ、なんだか同じにおいがする人だなー」 この、英士をからかって楽しむ姿勢。 なんとも普段の自分の姿に重なってしまって面白いったらない。 なんて云ったら、英士に『いい加減にしなよ』と云ってベシッと頭を叩かれてしまった。暴力だ! そんなことをやっているとき、英士をヨンサと呼んだ(早口言葉みたいだ)彼はどうしていたかというと、何故か目をキラキラさせて私たちを眺めていた。 なんだろう、この小動物系の人は。可愛いなーと思ってしまった。 「んじゃ、デートの邪魔してごめんねー、じゃあ私今度こそ討ち入りしてくるわ」 「デートじゃないよ馬鹿。さっさと行きなよ」 「ヨンサ、女の子に冷たすぎー」 「冷たすぎー」 「・・・2人とも、似すぎ」 云われて思わず私たちは顔を見合わせた。 よくわからないままニッコリと笑う。 「はじめましてー私英士の幼馴染のって云いまーす」 「はじめましてー僕ヨンサの従兄で韓国人の李潤慶でーす」 「・・・・・・・・・・(嫌だ・・・)」 「ねーねー、僕君とは仲良くなれそうな気がするんだけどどう思う?」 「わ、奇遇!私もそう思ってたんですよー!」 「やったね!じゃあお友達!」 「お友達!!」 「・・・・・先に帰って良い?」 「「良いと思うー?」」 「・・・・・(帰りたい・・・)」 きゃっきゃとはしゃぐ私とユンくんを、英士はかなり疲れた様子で見ている。オプションにため息つき。まったく気苦労が絶えない人でかわいそうだなーとか思いつつ、そんな英士が面白すぎるので懲りずに笑った。勿論睨まれた。 それから2人は(というかユンくんは)私が買い物終わるまで待っててくれて、どうせ帰る方向は同じなので一緒に帰ることになった。 面倒くさそうな顔してるくせに結局待っててくれる英士が大好きだ。 云い出しっぺのユンくんは、何故か楽しそうに私を迎えてくれた。1歳年上なのに、なんかすごい可愛い人だなー。 ザクザクと、軽く霜の立っている道を歩く。(ほとんどコンクリートだけど、一部だけ土の部分があるのだ。) 「小学校から一緒なのに一回もユンくんの話聴いたことなかったなー。英士のいけずう」 「何、いけずって」 「あ、もしかして私をユンくんに取られるとでも思ったの?ヤキモチ?可愛い英士くん!」 「・・・・・・日本語しっかり勉強したほうがいいんじゃない?潤のがずっと巧いよ」 「褒められたー」 「マシって話」 「貶されたー」 「理解したなら頑張りな」 やっぱり酷い男、郭英士。 コイツには冗談ってもんが通じないのか! とはいっても結局は我が家に近くのコンビニでの出会い。 歩いて5分の家に着けばサヨナラで。 冷たい空気に別れを告げて、私たちはさっさと家の中に入ろうと。 した。 が。 「ー」 英士の家よりも手前にある私の家の前で立ち止まり、ユンくんは私を呼び止めた。英士は気にせず先に家に入ってしまった。・・・白状だな、英士。 「何、ユンくん」 「僕さー明後日帰るんだけどねー」 「うん」 「見送り来てくれる?」 は? 思わず聞き返しそうになったけど、それは抑えて。 何で私?と思ったけど、ニコニコと私を見るユンくんがあんまりにも可愛くて。 「うん、行って良いなら」 と、応えている私がいた。 うをお、どんなマジックだこれ!? ていうか良いのか私が行って? 「よかったー」 「?なんで?」 「いやあ、それは明後日わかると思うよー」 意味深に笑うユンくんの言っている意味は、このときはわからなかったけど。 私は2日後、身をもって知ることになった。 空港で。 公衆の面前(しかも英士と結人と一馬もいた)で私の頬にキスをして。 満面の笑みを残してユンくんは韓国へ帰っていった。 英士曰く、 『そうだろうとは思ったけど、、潤に相当気に入られたよ』 ------------------ ユンが大好きです。 ユンって、気に入ったら押せ押せだと思うんだ。笑顔で。気に入ったら相当モーションかけると思うんだ!大好きだ!! |